「音と訓」 一海 知義
漢字には、音(おん)と訓(くん)がある。
音は、むかし中国から教わった発音を、今に伝えたもの、訓は、漢字の意味を示す日本語である。山は「サン」が音、「やま」が訓、川は「セン」が音、「かわ」が訓。
ただし、音しか使わない漢字もある。
犀(サイ)豹(ヒョウ)菊(キク)蘭(ラン)
これらは外国産で、漢字が渡って来た時、日本にはまだ居なかった、あるいはなかった動植物だろう。日本になかったラジオやテレビに、日本の呼び方がないのと、同様である。
更に、脳(ノウ)胃(イ)肺(ハイ)膀胱(ボウコウ)
解剖学が発達していなかった日本では、現物を見た人が少なく、これら内臓を表す漢字が渡来した時、外国音(中国音)で呼ぶ(外国語すなわち中国語で言う)しかなかったのだろう。
一方、音がなく、訓だけの漢字もある。
例えば、辻(つじ)峠(とうげ)榊(さかき)裃(かみしも)
これらはいわゆる国字、日本製の漢字である。したがって中国音はない。
ところで漢字二字の熟語には、音読みと訓読みで意味の違うものがある。
例えば、
一味 強盗の「イチミ」、「ひとあじ」違う
一目 「イチモク」置く、「ひとめ」惚れ
一方 「イッポウ」的、「ひとかた」ならぬ
「一」の音「イチ」はいわゆる呉音、「イツ」は漢音だが、意味に変わりはない。
その他にも、
赤子 陛下の「セキシ」、「あかご」を生む
片言 「ヘンゲン」隻句(せっく)、「かたこと」を喋る
色紙 「シキシ」に書く、「いろがみ」を折る
大事 「ダイジ」にする、それは「おおごと」だ
例えはまだまだあり、「大家」に至っては、三つも読み方がある。「タイケ」の出身、書の「タイカ」、「おおや」と店子。
日本人にはこれらを使い分け、読み分けてきた。それを間違え、常識がないと笑われた前総理は、世間でもよく言うように、まことにアイ・アム・ソーリ。
2010年3月5日 日中友好新聞~漢語の散歩道より |